永瀬拓矢五段 vs 木村一基八段

先手永瀬五段の初手▲56歩からの先手中飛車(木村八段が純粋居飛車党であることを見越したうえで、▽14歩問題が解決していない石田流にしないための手段かなと思う)。角交換型になり、先手が良くなるものの、木村八段の攻めを見て自信をなくしたのか最終盤で千日手を選択。後述するけど、千日手としてはやや先手が消極的というような内容。対局直後、銀で取る方法を指摘する木村八段の口調はどうも不満げに映った。指し直し局は後手ゴキゲン中飛車に対する先手二枚銀。木村八段が綺麗に攻めきり、最後は相手の駒不足を盤上で示して勝ち。

「強い将棋」と「勝つ将棋」は違うんだな、という感じだった。千日手か否かというシーン、「強い将棋」を指そうとする人ならリスクに飛び込んで勝負をするけど、「勝つ将棋」は漠然としたリスクを排除しようとするから千日手を選択することにはなる。「強い将棋」は負ける可能性も勿論あるけど、そういう「修羅場」の経験は棋士としての成長に確実につながる。だけどそういう修羅場を経験しない「勝つ将棋」は、確かに目先の将棋に勝つことはできるかもしれないが、それが長期的に見ておトクという気はしない。